スタートアップはニッチから始めるべきか

(2023/2/18に書いたnoteから移行した記事)

最近こちらのtweetを目にして、①の箇所が一般的に良いとされているスターアップのアイディアとの違い気になったので少し思考を巡らせてみた。

スタートアップはニッチな課題からスタートすべきと言われる理由

一般的にスタートアップはニッチで深い課題からスタートすべきだと言われている。

例えばPaul Grahamも理想的な課題の狭さと深さについてこちらのブログで井戸に例えて説明している。

なぜ井戸のような課題が良いのだろうか

スタートアップの課題を下記のようにカテゴライズしてみる。

1の領域は問題が明らかであり解決も簡単であるが、それゆえにたくさんの競合・サービスがすでに存在している。魅力的で分かりやすいため資本を持った大手も入って来やすい。
そういった競争を避けるためにスタートアップはその他の領域に出ていく必要がある。
他領域では2が一番挑戦しやすく魅力的に映る。特別な専門性や技術が不要だからである。アイディア一本で勝負できる可能性がある。おそらくスタートアップの数としては2>3,4という感じだろう。
そして領域2において課題を見つけるための1つの方法が、井戸の形をした課題を見つけるというものである。範囲が狭いがゆえに見つかりづらい。
上記のような必要性と実現可能性の観点から多くの起業家は、ニッチ領域を見つけるように言われるのだろう。

ちなみにMVP検証において課題ニーズ検証が一番大事という言説を割と見かけるが、これも上記の構造が原因だと思われる。3が多ければ技術の不確実性に言及したものが増えるはずだ。

スタートアップはニッチな課題からスタートすべきか

上の図からも分かるように必ずしもそうではない。
カミナシのCEOの方の話に出てくる下記の方法も十分にあり得る。(領域3に当たるもの)

課題で尖りすぎず、取り組む市場規模は大きい方がいい。課題は普遍的で大きなものに取り組み、ソリューションで尖るのがいい

*1

どの領域を選ぶべきか

カテゴリごとの良し悪しは無く、どの領域にもそれぞれのリスク・不確実性があり、それを認識しておくことが大事だと思う。採用すべき人材や力をいれるべき検証項目が変わってくる。

領域2であれば、選んだ課題からその先の広がりがないリスク、見つけた問題が実は問題ではなかったというリスクがあり得る。
領域3であればソリューションを作りきれないというリスクがある。
そして4にはその両方のリスクがある。
もちろん4が良くないということではない。結局はバランスや不確実性の量の問題である。個人的には最近日本でもよく話題になるvertical SaaSは領域4に位置するイメージだが(課題の発見がそのドメイン外からは難しく、かつ解決が難しい)、選び方次第では不確実性の量が2や3より少ないケースもたくさんあると思う。伸びているvertiacal SaaSは、executionのハードルは高いが使っている技術自体はそこまで目新しくないものというケースが多い印象である。

今後どうなるか

おそらく最近のAIブームで、少なくとも一時的には3の領域にトライするスタートアップが増えるのではないだろうか。
その際には課題ニーズ検証よりも技術検証(作りきれるか)という部分によりフォーカスが移るだろうと思われる。

自分も仕事ではAR,AIを扱っているので、課題ニーズのほうで不確実性を取りすぎないように気をつけたい。